昔話は嫁入り前に聞いた話を、後に孫や子に語ることが多いので、伝承には通婚圏が大きく関わっている。石崎の中村ともえの祖母は秋田、石崎の武井ちよみ、新湊の河越サキ本人と姑は津軽、古川の松代ヨサ子の母イセは石川県の人などの例がそれである。しかし、今回の調査の結果では、戦後、銭亀沢地区の昔話は婚姻によって大きく影響をうけたとはいえないだろう。
石崎には津軽から来た嫁さんは多いけれどみんな土地になじもうとしている。なるべく津軽弁を使わないようにしている。アクセントも違うし、使っても子どもたちがわからない。言葉が違うため何か一ついっても使えば笑われる。あがせ(あがれ)、休ませ(休んでいかないか)、……せ、というのが多い。『舌切り雀』も聞いたが絵本とは全然違う。子どもの遊びの呼び方が異なるが、子や孫には教えなかった。言葉で笑われるから話さない。たまに「とっぱずらかす」(ふと口にする)と笑われる。なるべく使わないようにしたのでなおさら忘れた。受け継いだものを伝えるのではなく忘れよう忘れようとした、という。