狐に憑かれた話

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 石崎八幡神社の前に大きい松の木があるべさ。あの松の木の上に本当に動物のようにしゅしゅしゅと上がっていくの。当たり前の人間ならすることでない。狐に憑かれたんだ。てっぺんさのぼっていくのだからね。つかまえたけど、逃げ出して歩くからその人はびんっと座敷牢に隔離されてさ、あとから治ったけれども亡くなった。昭和三十年頃の話だ(能正庄一郎談)。
 
 現在でも狐に化かされた話を語ることのできる人は少なからずいるが、あるはずがないと疑問に思って信じる人は少ない。ましてや日常こうした話が取りざたされることは稀である。