[渡島半島の植物相と植生]

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 渡島半島の黒松内地方から以南の全域はそこに生育分布する植物種の様子から、日本の植物区系(前川、1977)のなかで、近畿から東北地方にかけての日本海側と同じ「日本海地区」に属している。また、森林の構成組成による区分では夏緑広葉樹林域のブナ帯北部に属し、原生的にはブナが優占する林域となっている。
 ブナの林は日本列島の冷温帯の指標群落であり、その構成種の組成によって日本海側のブナ−チシマザサ群団と太平洋側のブナ−スズタケ群団のふたつに大別されているが、渡島半島のブナ林はすべてブナ−チシマザサ群団であり、日本海植物といわれるチシマザサ、エゾユズリハ、ツルシキミ、ヒメモチ、ヒメアオキなど多雪環境に適応的とみられる植物種が多いのが特徴である。高木層はブナが優占的で、ハウチワカエデ、アズキナシなど少数の夏緑広葉樹が亜高木層を構成している。林床にはチシマザサ、クマイザサ、などのササ類が優占し、オオカメノキ、ハイイヌガヤ、エゾユズリハ、ヒメモチ、ムラサキヤシオ、ツルシキミなど多種の低木類がみられるが、草本種は比較的に少なくヤマソテツ、オシダ、シラネワラビ、オクノカンスゲなどが主となっている。
 このように、恵山町のある渡島半島の南部は、本州要素の植物とくに東北北部と共通する植物種を多くもつ地域である。