(6)調査概要と所感

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 3月頃の本調査海域では、大体出現種が予想されたが、実際にそれを確認すると感動は予想以上である。
 ウミスズメ、エトロフウミスズメ、ウミガラス(実際には、ハシブトウミガラス)を観察したときは、内心「万歳」を叫びたいくらいの感動である。
 ハシブトウミガラスについては、以前、函館港岸壁と函館入舟漁港で死体を回収しているので近海に生息していることは予想していた。しかし、生きて海上を波飛沫の間を泳ぎ、飛んで行くのを目で追ったときは感動で一杯になった。
 エトロフウミスズメ、ウミスズメについては、椴法華村銚子岬で海岸からフィールドスコープでの目視観察で、海上を遊泳している姿を確認していたので、その生息は予想されていた。しかし、やはり生きて白波に覆われた海面で索餌行動を取る姿を間近に観察すると小さな姿が逞しく見えた。
 コウミスズメの群れの出現は船上の一行を沸かせるのに相応しい出会いだった。
 白く泡立つ波間から、3羽、5羽、10羽、飛び出しては船の進行方向に、或いは右に、左に進路を横切って飛び交い恵山岬に近づくほどに数が増えていく。一行はただ歓声を上げて指差すのがやっと、小城博士と佐藤文男氏の声だけが風に逆らって聞こえていた。「コウミスズメだ、コウミスズメ」佐藤氏の声が聞こえる。船は、ウミスズメ類の群れの真っ直中、索餌、採餌の真っ最中だったろう、調査船は群れの上を通過しているようだ。それ程多くのウミスズメ類が船の両舷近くから海上に飛び出していくのを只々見届けるのが精一杯だった。
 ウミウ、ヒメウなどが出現するのだが顧みる人もなくただ遠のくのを見送るだけであった。そんな中にあって、1人、林氏がウミウだ、ヒメウだとカウントしていた。
 海鳥の出現がとぎれると、視線を恵山岬方向に向け海岸線を観察していた。ケイマフリの繁殖する岩壁周辺を詳細に観察させてもらった。
 恵山岬を過ぎる頃、船長から入室命令が出て全員船室に入った。海が一段と時化てきた。船室を借り切っていたので、小城先生の司会で、感想と質疑をすることになり各自発言することとなった。
 佐藤文男氏が指名を受けて最初に口を開いた。
 「いつも海上を航海して離島に渡る機会が多いが、コウミスズメをこんなに群れで見たのは初めてで震えるくらいの感動で今います。本当にパラ、パラと見るのが関の山で、こんなに群れているのを見るのは初めてです。100、いや200羽はいたでしょう。」
 今日の観測はこの言葉に尽きると思いました。
 小城先生からは、「コウミスズメの食性はプランクトンで、この海域に湧昇が在り、プランクトン発生の絶好の条件を供えた海だということがウミスズメ類の生息を可能としている。」と説明があり会を終了した。