[道路法の改正と道路改修計画]

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 ところで、この当時の道路法はどのように定められていたのであろうか。又、道路の管理、あるいは開削・改修についての取決めは、どのようになっていたのであろうか。
 『管内と道路法』大正9年(1920)1月1日付函館毎日新聞
             〈函館支庁長の河毛三郎の談話〉より
 
 本年度の仕事は第一が国勢調査、それについで「大正九年四月から道路法が施行」される事になっている。
 この道路法は、明治七年(一八七四年)太政官公達によって今日まで行(や)ってきたのであり、従来は「国道」のみに就いて規定し「町村道」については何ら規定する所なく、「県道」は仮定国道の名の下に今日まで(官・国が)行(や)ってきたのであった。
 然るに時勢の進運に伴い、従来の如き不完全の規則では間に合わずとの論、朝夜盛んになり、河川法と共に制定の必要を説く意見が大勢を占めるようになった。
 然るに、河川法は淀川改修工事を機縁として、数年前から制定され、実行されているのであるが、道路法は遅れて明年四月より実施することになったのである。
 新則によるに、道路は「国道・県道・郡道・市町村道」の四段階に分けている。但し、北海道にありては、県道と言わず(まさか道道とも云えまいし…)「地方費道」、又、郡道に代わるべき道は「准(ママ)地方費道」という名を附せられている。
 「国道」は国家自身が経営し、「府県道・並びに地方費道」は長官または知事が府県・道会に諮問してこれを経営し、「郡道」は郡会に諮問してこれを営み、「市町村道」は市町村長がそれぞれ自治機関に諮問して、これを営むことになっている。
 北海道は郡制の機関がないから、「准地方費道」は道庁の直営になるわけである。
 さて道路法施行については四月までに準備を要するわけであるが、地方費の分は、過般の道会にも諮問案が出て、それぞれ答申があったのであるが、余の知る所では、道庁の定めたるものの外、さらに希望する処があったのである。従来仮定県道としたもので、今回仮定県道より取り除かれたものがある。例えば八雲・瀬棚間の道路がそれである。これに対して道会では、地方費又は准地方費道路の中に編入するよう答申がでた。又、大沼・鹿部間も同様、編入するよう希望的答申がでているが、採用されることと思う。其外、函館・臼尻間をも希望したが、これは僅かにその一部分を入れられたに過ぎなかった。
 其外、函館より恵山半島を経て森町に達する道路三二里間は、道庁に於て初めから採用しているが、これらは海岸突亢(とっこう)の間ばかりであるから難工事の方である。凡(すべ)て道路改修に付いては奥地の原野に比して渡島半島は海岸や山坂が多いので、費用は二倍三倍を要するであろう。そこで多額の費用を要する事であるから、いくら道会で決定したからといって、安心して官辺にのみ依頼するのは策の得たるものではない。
 例えば、国縫・瀬棚間の道路の如き其改修の必要は疾(と)く認めらるれたのではあるが、肝心の経費の為め捗々しくなかった。そこで、該地方人は協同一致協力奮発し多年間財を蓄え、資を積以て其機運を早めたのである。道路改修に就ては拓殖費からも地方費からも支出されるに相違ないが、単に之にのみ依頼すれば自然遅れる事を免れない。是非共々地方地方の士民が奮発し、以て其機運を進めるように心掛けるべきである。
 由来渡島地方の人々は、奥地に比して進歩却(かえ)って遅々たりといわれるが、凡て社会の事物は人の努力如何にあるので、渡島半島の開発はどうしても渡島地方人の努力にまたなければならないのである。そこで、努力は継続的でなければならない。忽ちにして熱し忽ちにして醒るが如きは、事を為す所以ではない。“牛歩遅々たりといえども、努めてやまずんば千里に達するを得る”のである。
 要するに文化の進歩は交通機関の如何にあるので、渡島半島の進歩を講ずるには、道路の改修與(あづか)って大関係を為すのであるから、地方人はよく此辺に注意し依頼心を去り、よく協同しよく耐え、以て地方発達の機運を進めるべきである。而してその方法としては、組織的な組合でもつくり合理的文明的の方法により、其大成を講ずることも、また、この際為すべきの急用事たるを失わぬであろう。(全文・一部文言整理した)
 
 道路法の改正・大正9年4月・実施、翌10年より
 道路は「国道・県道・郡道・市町村道」の4段階とする。
  ○道に当たる北海道の道路は『地方費道』と名付ける。
  ○郡道に当たる北海道の道路は『准地方費道』と名付ける。
   ・国道は国が経営(国費)する。
   ・府県道並びに地方費道は長官または知事が府県・道会に諮問してこれを経営する。
   ・郡道は郡会に諮問してこれを経営する。
   ・市町村道は市町村長がそれぞれ自治機関に諮問してこれを経営する。
  ○准地方費道は(北海道は郡制の機関がないから)道庁の直営になる。
 函館支庁長の河毛三郎の談話は、旧の道路法と改正される道路法の解説をし、改正道路法では、渡島地方の道路は北海道庁の所轄になるが、道路の整備は官まかせでは実現が遅れる。それぞれの地方の熱意と、相応の準備資金が必要であることを説き、併せて、それを現すための組織的取組み・行動をも促している。