四、ヤエ子沢の哀話(原木)

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 原木川の左股にヤエ子沢(ヤエ子ヒラ)と呼ばれている小沢がある。昔この沢に女の亡霊が出たという。
 この沢の名の由来は、昔ヤエ子という娘が、村の青年と恋仲になり、親に結婚を願ったが、親が許さなかった。悲観したヤエ子が或日の夕方山へ行ったきり夜になっても帰らなかった。村は大騒ぎになり、村人が総出でタイマツを持ち「ヤエ子、ヤエ子」と叫んで山中をさがし廻ったが見つからなかった。
 翌日も山さがしをしたが、夏で草木が茂っていて捜索に苦労した。〓の金沢福松(マッカジイ)が、原木川の左股を遡ってさがして行ったら、小沢の木の枝に首をつって死んでいるヤエ子を発見した。
 ヤエ子は思い余って死を選んだのである。この時からこの娘の自殺した沢を、誰言うとなく「ヤエ子沢」とか「ヤエ子ヒラ」と呼ぶようになった。「ヒラ」は崖の方言で蝦夷語から転訛したものである。ヤエ子が首つりした場所が崖になっていたのであろう。