昭和二十四・五年の財政

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 戦後新制中学校制度の発足・産業の復興開発・交通の整備・農漁業入植者への援助等に多額の費用を入要としていたことは、前にも記したが、昭和二十四年に至っても、村財政の財源である村税の納入状況はかんばしくなかった。
 当時の事情を物語る資料として『税資一號・村の台所はどうなっているか』(当時村財政を知ってもらうため役場から村議会議員に配布された資料)を記すことにする。
 
   税資一號
     村の臺所(財政)はどうなっているか?
        亀田郡椴法華村役場
    緒章
   過去十年間の我々日本人の歩み来りし足跡を振り返つて見ると其間に支那事変起り大東亜戦争起り遂には敗戦となり今日その復興と新らしい日本の建設に國を擧げて苦闘しているのである戦争中は國民の奉公心が昻まりまた政府は法人に対しては納税積立金を強制し個人については納税組合を助長奨励したなどで納税成績は飛躍的に昻上し滞納は殆んどその影を絶つていた。然るに終戦後は國民の遵法精神が甚しく弛緩し納税思想も著しく退化した感があるそれに財産税を始めとして國民の曽て経験した事のない税が出来たり、又復興その他終戦處理のため國費や地方財政需要が増嵩して増税に次ぐ増税で國民の負担は非常に苛重となり、一方インフレ経濟で貨幣價値に大きな変動があったなど種々の悪條件が重なつて滞納は激増した。そしてこの反應は國より道、道より村と著しい財政窮乏の現象を呈している。
 今や當村の財政は滞納に據つて歳入に一大缺陥を生じ難局に直面しているのである。この秋に當り敢へてこの現況を具(つぶ)さに開陳し村財政確立のため積極的な協力を切望して止まぬ次第である。
 
     本章 本村の財政事情
      第一節 本年度の財政について
   本村の財政(台所)にはなさねばならぬ仕事が極めて多いのである従つて豫算總額も六一萬圓餘の多額になつている。歳出内譯、別表(一)の如く教育費八%・役場費四六%・土木費四%・社会労働施設費一〇%・公債費五%・諸支出金一〇%・保健衛生費一・三%・選挙費一%・其の他一五・七%となつており何れも村民の福祉増進を図る為に必要な費用が計上されているのである。従つて豫算の額は仕事の分量を表はすものであり村豫算が多いと言ふことは村の財政活動が廣汎であることを意味するものであるかこの財政の裏付となるものは、村税であり、その使途を認識して頂きたいのである。即ち税金は只取られると云在来の誤つた考えをこの機に是正して貰いたいのである。
   更に歳出豫算額に對する歳入の面は別表(二)の如く大別して税収入の外、平衡交付金(元の地方配付税に当る)や国庫支出金・道支出金又は使用料及手数料・繰越金などいろいろあるが何と云っても村税の収入がその中枢をなしているのであり、從って税金によってその大部分の公共事業が行はれ、その活動も圓滑に運ばれて行くのであります。
      第二節 前年度の財政について
   昭和二十四年度に於ける村税収入成績は五六・六%で滞納額一七四萬圓別表(三)に及ぶと云う不振の状況にあって、次節に述べる如き事情下にあっては村財政面にとって一大打撃といふべく之が完納を切に望むものである。
      第三節 前年度と本年度の財政方針の差異について
   昭和二十四年度に於ける、村税賦課額四〇一萬圓の内二六三萬圓が道税附加税であり總額の六五%を占めていた。從って独立税としての賦課は僅々三五%に過ぎなかった然して、この附加税は道税のあるところ必らず影の如く附纒うという謂はば弊害を醸して来又其の課税額の算定には一定基準率が設定されていて個人の意志と人格を無視した不合理な憾みも多かった。
   然し昭和二十四年五月十日米國コロンビア大學教授カール・シャープ博士の訪日に據って之れらの弊制が指摘され日本の税の均衡化税制の近代化・能率化の計画について勧告が発せられた。
   本年度より実施される前記シャープ勧告に基く地方税法の改正であり又日本税史に曽って類を見ざる大改革なのであります。即ち從来の附加税制度が全面的に廃止され独立税十三種目も八種目に減じられたのである。
   従って本年度より國税は云ふに及ばず道税とも独立税は分明に区別されたのであり村當局は村税(独立税)のみに依って賄う事について曽って経験した事のない困難な局面に逢着している次第であり繰越勘定となっている滞納がこの儘継続する様な事態が起るならば村財政は一大危機に餘儀なく直面するのである。
      第四節 起債状況について
   本村の起債(借入金)は別表(六)の如く昭和二十二年以来三ヶ年間に二一〇萬七千圓となっており、現在までに償還した額は一五萬三一五圓となっている。
   これら起債は何れも戦災に因って焼失せる小學校の復旧工事費又は新制中學校々舎の整備費等であって、この償還には殆んど一般歳入を以て賄う事になっている。
   今後この巨額の負債を年々償還する為に村當局はもとより村民に於ても特段の努力を必要としているのである。
   依って村税の一〇〇%納付を懇望するものである。
      第五節 滞納について
   昭和二十四年度に於いて村税の収入状況は五六・六%二二七萬円という成績不良であって納付率の最下位は鉱区税附加税次きが不動産取得税附加税、舟税、建物改修税、附加税の順になっている(別表(五)参照)そしてこの滞納額は當年度へ繰越金となっており前節の事情下に在る村財政によっては、誠に重要なる関心事であって是非とも之が完納に協力を切望するものである。
   尚この滞納の部落別税目別状況調は別表(四)の通りである。
      終章
   村財政の内情は以上述べた通りであって決して楽観的なものではなく寧ろ断末魔の状態と云っても過言ではなく、本年度計画中の道路整備・保健厚生對策等々の着工実施の早遅可否は偏へに村税の納入如何に懸っているのである。この村財政の現状を深く認識あらん事を重ねて望み本村財政の現況報告篇とする次第である。

昭和二十五年度当初予算


昭和25年度役場事務組織