北海道信用漁業協同組合連合会々長賞受賞
(広報とどほっけ昭和五十五年三月号より)
朝四時半、目をさます。
有線で昆布採りがあることが放送される。まだ寝ていたいのを我慢してジャージに着換える。親戚の家まで自転車をこぐ。夏とはいえまだ朝は寒い。
僕が着くころにはジッチャンが昆布を刈るカマ、その切った昆布をひっかけてとるカギを用意してもう出かけるぞという感じで待っている。小型トラックにはそれらと船外機に入れる油などが積んであった。船揚場まで約五分、行く途中ほかの漁師が昆布を取るための用意をしている。
船揚場に着くともう漁師達は海さ船を浮べていた。まだ陸にいる人たちの間では、漁師特有の言葉で会話がかわされる。
「今日なんだか波あるえんだけどどんだや。」
「んだ、なんだか波たげえんたな。」などといつも同じ。僕はまだねむい目を擦りながら船を出す準備をする。
「さあ出よう」ロープを二本を互い違いに使い船を海へ出す。慣れない僕はよろけて落ちそうになる。海草が船外機のスクリューにからまない所まで櫂でこぐ。このこぎ方がまた難しい。こぎ方が悪いと船はグルグル回って前へ進まない。
船外機のエンジンをかけるひもを思いきりひっぱる。「グロロロ」という音とともに白い煙があがる。かじを握りスピードを増しながら目的地へ向う。船の前があがり波しぶきがかかる。
目的地に着いた漁師は大きな水メガネで昆布のある所を探す。採取開始の放送がはいると、われ先にも昆布を取りはじめる。まっかという先が二つに分かれた道具で巻きつけてとる方法があるが僕たちはカマ刈りという方法をつかう。
ジッチャンが柄の長いカマで昆布を刈る。それを僕がカギですくい船の上にならべる。一日目は昆布をあげるのが精一杯で積み方が悪くあまりとれなかった。二日目になると慣れてきたのか昆布をひきあげてそろえるのが少し楽になってきた。しかし船外機が故障、ジッチャンが櫂でこいでいった。
昆布がある時は二時間程で終るが昆布が少なくなってくると取っている時間が長くなる。そうすると船酔になる。早く終ってくれればと良いと思っている。時間が長く感じる。採取終了の放送がはいるとほっとする。明日は昆布採りにならないようにと思う。
しかし僕は船に乗るのが好きだ。前の晩には楽しみで明日どうかと思う。次の朝早く起きると気持が良い。出かける前の漁師の人たちの笑った顔がまぶしい。また特有の言葉がその場を盛りあげる。そんな所で育ってほんとうに良かったと心から思う。
海藻類の生産量と生産金額 (単位 トン、千円)
漁場改良造成事業