昭和二十一年三月日本の教育状況調査の目的で米国教育使節団が来日し、調査結果を日本政府に提供した。日本政府はこれを参考としながら内閣に『教育刷新委員会』を設置し、教育制度の改革について研究討議を行い、昭和二十一年十二月二十七日、六・三・三・四制を中心とする改革案を採択した。その後この採択について文部省が同意を示し、かくて六・三・三・四制が施行され、昭和二十四年四月より六三制の義務教育が実施されることになった。
昭和二十二年三月の高橋文部大臣の訓示によれば、六・三・三・四制を中心とする改革はアメリカ教育使節団の勧告案の線に沿うものであり、また連合軍最高司令官の期待しているものであるといわれ、更に言葉を続け、六・三・三・四制の採用の主な理由について次のように述べている。
第一には国民に教育の機会均等が保証されていることであります。従来の学制は国民学校の初等科を終えて国民学校高等科及び青年学校に進む者と、中等学校を経て高等専門学校に進む者との二つの体系に区別されていたのでありますが、今回はこれが一本の系統に改められ国民全部がひとしく教育を受け得る機会が与えられたのであります。
第二には、国民教育を普及向上させ、又男女の差別待遇を撤廃することであります。文化国家を建設するためには、国民の資質の向上に努めなければならないのでありまして、男女ともに九ヵ年の普通教育を無償の義務教育と致そうとする次第であります。
第三には学制を単純化することであります。従来の複雑多岐な学制を単純化して、心身の生理的発達の段階に応じて、原則として六・三・三・四の小学校・中学校・高校・大学と致そうとする次第であります。
第四には、国家の学術文化水準の向上をはかることであります。この制度を採ることは、自然に大学の数を増すことになり、従って大学教育を受ける人数が著しく増大し、更に大学の上に大学院又は研究所を充実することによって、わが国の学術文化水準の向上が十分期待し得られることを信じます。(中略)
以上学制改革大要の方針を申し述べましたが、予算設備等の関係で、明年度に中学校一年を義務制とし、逐年進行させ、三ヵ年をもって完成致すことになっているのであります。
高等学校は二十三年度、大学は二十四年度から実施の予定で研究を進めつつある次第であります。
前述の通り、現下国家財政経済の窮迫、資材設備の不足、教科配置の困難等、幾多の事情があると思いますが、万難を排してこれを実施致すことに決定致しましたので、各位におかれましては、十分な御協力をお願い致す次第であります。
(東京法令・日本史資料を参考にす)