銚子の澗大セイウチ捕獲

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 明治十一年一月十日、椴法華の小谷金蔵、銚子の澗、平磯で大セイウチを発見、息子と二人で磯船に乗り鉄砲、もりで激闘すること三時間、帰村途中の鱈釣り船の加勢を得て更に一時、ついにこれを仕留める。
 
(現在、市立博物館所蔵、函館市指定有形文化財)
    開物類纂第二号、開拓使
    ○海馬捕獲の報文
    椴法華村自宅ヘ帰リ鉄砲弾薬用意シ尚又二男亀太郎両人ニテ漕出シ再ヒ「チョフシ」澗ニ至ル此時尚最前ノ奇獣臥居タリ右ケ所ヨリ凡五十間程隔リタル平磯ヘ直チニ上陸、亀太郎ハ其処ヘ差置私一人ニテ持参ノ鉄砲ニ二ツ玉二匁五分玉ヲ込メ徐々ト凡三十間程ニ近寄ト雖モ海獸ハ動揺ノ景色無ク依然トシテ臥シ居ルニ付頭上ヲ目掛ケ一發ヲ試ルニ少シモ動セス然レトモ弾丸ハ的中セシニ相違無之尚徐々近寄リ二ツ玉ヲ込メ三四間程ニ到ル処海獣突然起キ上リ叫フコト二三声實ニ山岳モ崩ル如ク其勢ノ猛烈ナルニ驚駭シ前後夢中ニ凡五十間程逃去リ岩石ノ陰ニ潜伏暫ク景況ヲ覗居シ処海獣前後左右ヲ回顧シ尚又打臥シ候ニ付凡三十間程進ミ牙ノ辺ヲ狙ヒ砲発ス海獣起上リ基勢譬フ可キ者無シ其儘海中ヘ飛入リ形跡ヲ見ス今此場合ニ至リ見失ナハゝ極メテ遣憾ニ付直チニ乗船近辺捜索セシ処凡五十間程沖合ニ浮出タリ依テ亀太郎一同漕寄セ二十間計リニ近付キ尚發砲セシニ是又正ニ的中ス最前ヨリ廔的中スルモ少シモ衰弱ノ體ナク又海底ニモ沈マサルニ付尚二三間ノ処ニ近ツキ用意セシ「ハナレ」又「モリ」ト云フ形状下図ノ如シ凡七十尋程ノ綱ヲ付置タリ、ヲ海獣ノ背部ヘ打込ミタリ此時沈没スルニ付〓テ綱ヲ延ハシ凡四十尋程沈ミ行キ又浮出ル時ハ綱ヲ繰リ詰メ或ハ前後左右ヘ泳ク侭船モ又漕廻シ如斯スルコト幾十度時間ヲ費スコト三時間程ニ及ヒ(以下略)
 セイウチ
  全重量 二百三貫  長さ 一丈一尺  牙長さ 一尺八寸  鬚長さ 一尺強  前足附根胴周囲 九尺九寸

海馬ノ図、開物類纂第二号開拓使編