椴法華村の村落は海岸段丘に沿って形成され、海岸地帯の道路沿いに人家が密集しており、背後には急峻な恵山が被いかぶさるように迫っている。この人家に押し迫っている段丘は石・火山灰・粘土・砂等の軟弱な地質のため水に非常に弱く、土砂流出防止堰堤・保安林等の保安設備の完備されぬ昔日においては、一度長雨が続くと必ずと云ってよいほど山津波、土地のことばで『つく』とか『山つき』が発生したのである。
この山津波のため家屋・家財道具・船・畑・道路・時には人命すら失われることさえ珍しくなかったが、過去何度か繰り返された山つきの中からその主なものを次にあげてみることにする。