隊士の徴発

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 川汲に駐屯していた隊士たちが、網元小板屋久兵衛の家に来て、金銀糧秣を徴発した。当主久兵衛は村の重立で、のちに村総代などをつとめた人である。このとき久兵衛は糧秣を差し出したが、金銀は不如意といって金銀を出さなかった。
 幕兵は怒って久兵衛を土間に坐らせ、打首にするとおどした。家人や召使いたちは、ただ恐れおののくばかりだった。この時、隣家の酒井屋重兵衛が急を聞いて馳けつけ、暫く暫くと間に入った。重兵衛は、近年、村は不漁で近在の漁家はその貯えを使い果たしてしまったと、経緯(いきさつ)を言いつくろってその場をおさめたという。
 小板屋に女中勤めをしていた佐藤市雄(明治四二年生)の祖母の話として伝えられている。