―昭和46年9月27日第3回定例会町議会議事録より―
議長 町長から行政執行方針説明の申し出がありますのでこれを許します。よろしくお聞きとり願います。
町長 私は去る八月に行われました町長選挙におきまして、各地から絶大なご支援を頂載いたしまして、亡くなった米田町長のあと町政を担当する事になりましたにつきましては、身に余る光栄であり責任の重さに身の引きしまる思いをしているのでございます。
そもそも我が南茅部町は、その昔から漁業の宝庫として名をなして参りました。幸い今日に至るもその間多少の紆余曲折はあったにしましても、漁業立国を貫いている所でございます。そして昭和四六年からとり組む第三期の北海道綜合開発計画では、本道を以って我が国が一大食糧基地たらしめようとしているのでございます。
ここにおいてあたかも時流に乗り道策にマッチした強力な生産活動の展開が容易な如く考えられる訳でございますけれども、仔細に思うとき、一次産業地帯としての決定的な弱さというものは依然として救われない恨みがある訳でございます。目下のところ本道の就業構造は、一次産業と伝われる水産・林業・農業の従事者というものは約二三%、約四分の一が就業者と言われております。人数にして約五七万人でございます。二次産業と伝われる部面は二七%の六六万人と言われておりますけれども、三期の綜合開発計画では一〇年後の昭和五五年には一次産業の就業者を約一二%の三四万人、二次産業については三三%の九三万人という変化を見込んでいるのでございます。つまり、我われの如く一次産業の地帯に居る者は大幅に就業者が減るという見込みで、実はもろもろの計画を作っているというのが現状でございます。
さらに所得の面で申し上げますれば、一次産業者の所得面は一〇年の間に約一・七倍ほどの増を見込んでおりますけれども、二次産業に於きましてはゆうに三・七~八倍の増という見込みになっている訳でございます。これを仮りに一算をいれて判ることは、一次産業は約半分に減りますから所得は倍に伸びて大体三・二~三・三倍というふうな計算がでて参りますけれども、二次産業につきましては人数の多少の変動などを通して一層の伸びが、さらに人員の是正などによりましてさらに所得の増が見込まれてくるという自然な勢が実はでてきているのでございます。
計画であるとは言いながら、これは果たして何を意味しているかと思うとき、つまり水産・農業・林業という一次産業の地帯は一層の過疎化を前提にした所得構造が見込まれている事実がある訳でございます。極めて残念至極と言わねばなりません。国策としての水産に対する強い保護政策が無いためにどうにもならないという感じがしているのであります。私はこの点について非常な憤りを感じて、かつての会議においても道の企画部の幹部に対して「何んたることか、どうしてくれるのか」と大いにやったこともあります。
今日の私は漁村の置かれている極めて脆弱な立場というものに目覚めて、真の町づくりに勇往邁進したいのであります。それは漁民の地域住民のより一層の結束をはかって、外に向かっては強い政治的行動を起こし、内に向かっては育てる漁業への脱皮、産業の体質を複線化、あるいは多用化してゆく考え方、具体的には林業構造改善事業あるいは畜産の振興、観光面を産業のレベルにまで引き上げる努力、そしてあくまで互いの意思の疎通をはかりながら、つまり、対話の進めのなかから町づくり職場づくりの実効のあがる道を見出しつつ進みたいと存じているのでございます。
私はここに、任期中の構想として、先に発表されました長期の町づくりによる物と心の両面にわたる調和のある発展を目指すものであることを申し上げたいと思います。それは山村振興計画による水道・地域会館・商工会館あるいは文教施設整備・病院・庁舎建設・漁港・道路整備の促進、万畳の草地造成など施設物的なものと、先に申し上げました産業の振興複線化、これらに呼応した物的なものを真に活用する形での人づくり、青少年対策ということに大いに力を致したと考えておるのでございます。
つまり、衆知を集めて町づくり読本の作成を通して町づくりの意欲を高め、社会教育指導体制の充実強化を通して成人の啓蒙啓発をはかり、スポーツの振興を通して青少年に厳しさをもって物事に対処する気風をみなぎらせたいと思うのでございます。
あわせて今日的課題としての福祉向上という面では、老人憩いの家、医療給付などについての改善策に着手し、地域ごとの保育所設置を進める予定であります。今は昭和四六年度も後半に入ろうとしております。
私は本年度後半の取り組みとしては、ごく一部の機構改革でありますけれども着手し、人事の異動を行って万般にわたる安全の確保、公害苦情などの窓口を設定して地籍査室、体育青少年係の新設をし、あわせて人事の刷新をはかりたいと思っておるのでございます。
次にごみ焼却炉、福祉センターの年内着工も、場所決定のうえで極めて問題が伏在しておりますけれどもと何んとしても着手したいのでございます。次は病院の赤子対策としては取り敢えず事務部門の少数精鋭化、病院車運行の合理化を断行して、コンサルタントからの分析資料に基づいて適正規模の病院整備、函館との広域医療の提携などについての青写真を年度内に完成するとともに、岩手医大からの内科医定着についてもさらに一層努力を重ねて参りたいと存念しております。
青写真的なものとしては育てる漁業への脱皮、組合の基盤拡大を求める来年度からの取り組みを前提にした具体的な計画もまとめてしまいたいと、観光を観業の儲かる産業としての水準まで高める方策についても、年度内になんとかその具体策をまとめてしまいたいと考えておるのでございます。
次にごく近くの処理としては、九月災害を軌道にのせることと産業面での最大課題である漁港整備計画第五次改正への採択要請には全力を以って当たる所存でございます。
最後に、懸案事項である庁舎建設のことでありますが、総合庁舎の必要性については今日大方にご異存の無いところと存じますけれども、場所の如何、取り運びの如何によっては、町内に決定的な大きな禍根を残すことは明らかであります。しかし、情熱もかつての頃より大幅な前進をみていることは認めますけれども、利害相反する地域に対する理解協力の働きかけは今少し必要なことも確かであろうかと考えております。私はこの後、幅広く精力的に関係地域の協力の要請を展開して、位置決定の時期の熟することを早める努力を、当面、大馬力でしたいのでございます。建設時期については、起債とのかみ合わせもありますので、今ここで直ちに明言することを避けたいと存じますが、私の手でこの苦難な事業は是が非でも早めに解決したいという強い意志だけはご理解戴きたいと存ずるのでございます。
以上、巨細にわたり基本的なこと、当面のことなどその所信、計画の一端を申し述べました。これとて議会の皆さん、役場職員の絶大なるお力添えを通してこそはじめてなし得るものと十分承知しておりますので、何分のご理解とご協力を切にお願い致しまして行政執行方針の説明を終わります。
(場内拍手)