茅部郡臼尻村大字臼尻村字臼尻村五十一番地
現戸主幸一郎の祖父にして天明五年五月を以て生る。漁業に従事し種々改良する所ありて功労多し。
本村は往時雑木欝蒼海岸を掩ひしも、濫伐の為め漸次荒廃せんとするを見、植樹の必要を感じ且つ地味氣候之に適するを認め、安政五年郷里南部に産する杉種を購入し、苗圃を作り良好の結果を得。
文久三年始めて千本を植付たり。是れ実に同村に於ける植樹の嚆矢とす。斯く自ら率先之を実行すると共に一面村民を勧誘せしかは漸く植樹をなすもの続出するに至れり。
而して幸吉の植栽したる数六萬餘本、今や成長して用材に適し其森林の壯観地方稀にみるところなり。尚ほ村有及個人植樹を併せて全村三百萬本以上に達したるは幸吉之か模範となり、一般に感化を與へたるに由るものにして其功績沒すへからさるものあり。明治十四年九月歿す。