解題・説明
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古松軒は江戸中期の地理学者。享保11年(1726)に備中国下道郡新本村(総社市)に生まれ、名を辰または正辰、字は子曜といった。家は薬商を営んでいたが、家業を顧みずに賭博に耽っていたという。才能が開花するのは50歳を越えてからである。生涯旅を好み、『西遊雑記』『東遊雑記』『四神地名録』などの著述を遺した。実地調査に徹し、その正確さは、近藤重蔵も舌を巻く程であり、『東遊雑記』を携えて近藤が蝦夷地を巡視した折に、古松軒に当てた書簡にそのことが述べられている。明治期に玄孫古川二亀市が函館に移住し、高龍寺に墓碑を建て、さらに函館図書館にこの肖像をはじめとする資料を寄贈している。谷文晁の『近世名家肖像』のうちの古松軒の肖像がよく知られるが、本肖像もそれに比較的近い年齢の姿で描かれる。絵は上方の四条派の呉春門人岡本豊彦、賛は地理学の師であった長久保赤水である。
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