解題・説明
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明治期の浜松の案内書である。当時としては珍しく、浜松停車場、八幡宮全景、築山御前之廟、浜名橋の写真を掲載している。浜松町の歴史を記した後、官衙(浜名郡役所、浜松町役場等)、学校(浜松尋常・高等小学校、浜松商業学校等)、銀行(西遠銀行、浜松銀行等)、会社及工場(帝国製帽株式会社、浜松米殻取引所、日本楽器製造株式会社等)、医院、劇場、寄席、停車場、旅館、割烹店等を紹介している。また、御恵の滝と長者滝という2つの瀑園を紹介しているが、現在は存在しない。産物の重要なものとして風琴(オルガン)、洋琴(ピアノ)、織物、漆器、帽子、生糸、曳馬萩筆、茶、煙草、浜名納豆、忍冬酒、海苔、傘、足袋等と記している。浜松城の紹介では浜松出身の漢学者内田周平の「浜松城墟記」、五社神社の紹介では賀茂真淵撰「光海霊神碑銘(うなてりのみたま)」、曳馬童子戯作の「浜松八景」や、江戸時代末期の中泉代官で儒者の林鶴梁の「游舘山寺記」等を掲載している。また、谷島屋書店(浜松町連尺)や堺屋薬舗(浜松町連尺)、間淵酒店(肴町)等の銅版画の広告からは、当時の主要な商店、店頭の風景、従業員の出で立ちが分かる。編集者兼発行者は谷嶋(島)屋書店の齋藤源三郎、印刷は鞍智逸平の開明堂である。
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