解題・説明
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原本は一巻、現在は横巻きになっているが、もとは美濃紙縦二つ折墨付81枚に筆写した綴本で、表紙も表題もなく、書名も明らかでない。文字も粗略で、時に磨損があり、脱字誤字宛字等もあって、判読に苦しむ箇所もすくなくないし、記事も前後倒錯していると思われる部分もあってその内容も浜松宿の古文書古記録等をはじめ、筆者の見聞きした事項など多岐に亘っている。 / したがって筆者も定かでないが、普通に「旅籠町平右衛門記録」と呼ばれているのでそれにしたがった。これは本書の「正徳貮年旅籠町困窮ニ付連尺町加町一札之事」の條に、平右衛門とよぶ者があって、それには殿づけが無いので、平右衛門を筆者と想定して名づけたのだという。平右衛門の名は「糀屋記録」にもあらわれており、旅籠町で問屋當番を勤めている人である。いずれにせよ、かかる記録を入手しやすい位置におったものの筆になったものであろう。記事は宝暦二年(1752)がもっとも年代が新しいのでおそらくそのころ成立したものであろう。現在のところ濵松宿について知り得るもっとも古く、もっともまとまった貴重な庶民資料で、岡部文庫旧蔵、現在は近藤用一氏の所蔵に係わる。(「浜松市史」史料編一) / 現在、中央図書館宝林山房文庫として収蔵。
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