解題・説明
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鰐口は寺社に掛けられた青銅製の一種の打楽器で、古くは「金口(こんく)」とも「ひらがね」とも呼ばれた。浜松市南区頭陀寺町にある古刹頭陀寺に旧蔵されていたもので、蓮華文(れんげもん)の撞座(つきざ)を中心に2条の突線を、周縁と内側に2帯配した簡素ながら力強い作品である。撞座をめぐって相対する陰刻の銘がある。 「頭陀寺 奉鋳金口一口大勧進僧敬意 文永五年戊辰十二月十五日 寺家同心 (鋳物□[師]□佐□□末)」 撞座の蓮子(れんじ)を示す小円は、もと密接していたのを後世中心1個、周囲8個、計9個に彫り改めた形跡がある。また銘文のうち括弧(かっこ)で示した最後の一行を故意に削って消した跡がある。この2点について多少の議論があるらしいが、本鰐口の真偽にかかわるものではない。従って、文永5年(1268年)という紀年銘からして、本例は静岡県下最古の鰐口というべく極めて貴重な資料である。 参考文献:「指定文化財のしおり」 発行/浜松市教育委員会
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