珍しい植物

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 つぎに分布上からみた珍しい植物を列挙しよう。
(1) 暖地性のもの
 暖地または西南日本に多く分布している植物で、浜松地方では、山地や丘陵の谷間の樹林は暖帯常緑広葉樹林となっている。その中に、
  タイミンタチバナ カギカズラ……………………………房総半島以南に分布
  トキワガキ クロバイ ダンチク ドウダンツツジ……伊豆半島以西に分布
  ミミズバイ カンザブロウノキ ハンカイソウ…………富士川以西に分布
  サツキ…………………………………………………………大井川以西に多い
  クチナシ………………………………………………………掛川以西に自生
  オオイタビ ハスノハカズラ………………………………静岡県西部以西
 
第1表 浜松地方の植物分布
植物の種類生育地分布状況
ハマボウフウ遠州灘砂丘地帯(米津の浜)米津の浜では波打ちぎわからややはなれて砂丘がひろがり、ハマボウフウなどの砂地植物が砂に埋もれそうになって生えている。
防風・防砂のために植えられた黒松林が数列の古砂丘上にあり、そこにはマルバアキグミが多い。
コオボウムギ
コオボウシバ
ハマスゲ メドハギ
ハマヒルガオ
ハマニガナ
ハマエンドウ
マルバアキグミ
チガヤ タヌキマメ
ケカモノハシ
ビロウドテンツキ
マルバアカザ
コモウセンゴケ三方原台地とその周辺湿地三方原台地は酸性土壌のやせ地で、その上、礫層のため土地は乾燥し、植物も満足に成長しない。小さい赤松・黒松が林をなしている。
ススキの原もひろい。湿地には食虫植物が多いのも特色、とくに四ツ池周辺は見事である。
ミミカキグサ
ムラサキミミカキグサ
イシモチソウ
エンシュウハグヤ
シホガマギク
サクシロギク
サクギキョウ
ホシクサ モジズリ
アズマネザサ
ケネザサ イヌツゲ
ヤマツツジ
ツクシハギ
タカナデシコ赤石山地と天竜川流域南アルプスはその位置が南に偏しているため、北アルプスよりも暖帯的性格が強く、森林帯の樹木の繁茂は北アルプスに比べると優勢である。森林限界も平均2500~2700mで高山帯(草木帯)植物が多い。
天竜川流域は杉・桧の人工植林が美しい。
ヤナギラン
ホソバトリカブト
ハクサンイチゲ
ハゴロモグサ
タガネスイバ
ミヤマクワガタ
ミヤマリンドウ
シナノキンバイ
ミヤマキンポウゲ
クルマユリ
イワツメグサ
キバナシャクナゲ
ミヤマオダマキ
ツガザクラ

 
(2) 寒地性および山地性のもの
 浜松北部の山地には、ヤマハンノキ・ヒメシヤラ・タニジャコウソウ・ヤマトリカブト・シキミ・モミなどが五〇〇メートルにもたりない低山にまでみられる。
 このような山地にとどまらず、三方原台地周辺の湿地のような暖地で平坦なところにもキリガミネトウヒレンのごとく長野県霧ケ峯方面に分布している植物がみられるのである。
 西南暖帯性・北方寒帯性両要素の植物が浜松地方で互いに交錯しているだけでなく、浜松周辺には遠州灘沿岸の砂丘地帯があり、三方原の台地があり、赤石山地も近いので、気候のほかに地形・地質・土壌の差異が植物分布の上に大きい影響をおよぼし、それぞれの地域に特異な植物群落ができている。その状況を概観すると、第1表のごとくである。