まず、商圏をみよう。日本で、商業上もっとも大きな勢力をもっているのは東京と大阪である。大ざっぱにみると、東京は東日本を、大阪は西日本を商業上の勢力範囲、すなわち商圏としている。中部地方では名古屋も商業上、かなり大きな勢力をもっているが、大部分は東京と大阪の商圏にはいっている。中京経済圏は東方富士川までおよんでいるといわれるが、それは富士川以西に東京の商圏がおよばないということを意味するものではなく、両者は静岡県でかさなっている。山梨県は東京の商圏で塗りつぶされているが、長野県では南半は名古屋の商圏、北半は東京の商圏である。富山県は、新聞の購読についてみれば、大阪系が東京系より多いが、べつに名古屋系も進入しており、全体としてみると、富山県は関西色が強い。とにかくこのようにして、東京と大阪の商圏は、大体北は親不知から、南は浜松にいたる線が境になっており、それが新聞にも現われている。東海道本線の列車で旅行し、浜松駅で「新聞をください」というと、売り子は「東京のですか、名古屋のですか」と聞く。浜松から東の方の駅では東京の新聞を、浜松から西の方の駅では大阪と名古屋の新聞を売っているが、浜松駅では東京と大阪と名古屋の新聞を売っているのである。
この廻廊筋の都市には東京と大阪の資本による工場が多く、またデパートも同様である。観光地においても、つねに両系統の資本による競争がはげしい。こういったものも大体浜松付近が移行地帯となっているようである。