風俗習慣や言語でも同じようなことがいえる。関東の女子の衣服は単色であるが、関西の女子は雑色を好む。ウナギを背から裂くのは関東流、腹で裂くのは関西風。浜松までが関東流で、豊橋から西は関西流になる。酉の市も関東のもので、関西にはない。このように生活的には浜名湖を境に関東と関西の流儀がわかれる。琴曲でも静岡までは山田流が圧倒的に多いが、浜松は生田流が盛んである。茶道・華道にもこういった傾向がある。食物のうちで麵類をみると、静岡はソバ、豊橋はウドン、その中間の浜松は、ウドンとソバが半々になっている。
言語も、大体浜松が東西の交流点になっている。たとえば関東の「寝ろ」・「起きろ」という言い方は、富士川を渡ると、「寝え」・「起きい」に変わる。関東一円でよく使われる「べえ」言葉も南伊豆では聞かれるが、富士川あたりで消えてしまう。大井川東岸の島田まで使われる「行かない」という言葉は、西岸の金谷へ行くと「行かん」・「行かぬ」となる。浜松付近で移り変わる言葉をもうすこしあげると、つぎのごとくである。
東日本 人が立ってる 雨が降ってる 白く よく なんだ 川だ 払った 買った
西日本 人が立っとる 雨が降っとる 白う よう なんや 川や 払うた 買うた