北方の地質

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 浜松地方の地質は、さきに述べたように西南日本に属し、しかも中央構造線により、内帯と外帯に区分されている。【青崩峠】その構造線が青崩峠から水窪を通り、佐久間を経て浦川にいたり、愛知県の豊川の流域へ抜けている。この構造線は直線的な谷をつくる特性があり、天竜川を大きく屈曲させている。

浜松周辺付近の地質図

 この中央構造線の北西側が西南日本内帯で、静岡県内でこれに属する面積はごくわずかであるが、よく内帯の特色を示し、花崗岩類や片麻岩類が発達している。
 こうしてこの地域の大部分が西南日本外帯に属し、各種の岩層が平行し、帯状構造が発達している。しかも、ほぼ中央構造線に平行する褶曲や断層が発達し、屋根瓦状とか、鱗状と呼ばれる構造を示している。中央構造線に接して内側から三波川系結晶片岩・御荷鉾系緑色岩類・秩父古生層および中生代地層の変成していない堆積岩類の順に並ぶのが原則である。ところがこの地方では、西南日本がフォッサマグナにつきあたり、これまで東西方向であった中央構造線が東北に向かい、さらに南北方向に近づく。この転向にともない、天竜川の東に南北性の赤石裂線が出現する。外帯山地が中央構造線とフォッサマグナとにはさまれて、北へ行くほど楔状に狭くなり、いわゆる赤石楔状地が形成されている。
 
 【井伊谷 久根鉱山 峰之沢鉱山 秋葉山】浜名湖の北では、古生層にはさまれた石灰岩が盛んに採掘されている。それは井伊谷(引佐郡引佐町)でもっともよくみられる。結晶片岩帯の中の久根・峰之沢の両鉱山は、いわゆる別子式含銅硫化鉄鉱床のキースラーガーである。天竜川のすぐ東では赤石裂線のために岩層の並び方がみだれ、秋葉山付近でジュラ紀の鳥ノ巣石灰岩を含む地層が、南北に近い走向を示している。赤石山脈の主要部をつくる赤石累層は、砂岩・頁岩やその互層が輝緑凝灰岩やチャートを多く含み、その外側は三倉層と呼ばれ、ともに中生代とされている。これらの外側に第三紀層の瀬戸川累層がある。
 この広い山地は、屋根瓦状の構造をした、これらの累層群によって組みたてられている。山地は北西から南東に向かってしだいに低くなっていて、開析された傾動地塊と考えられている。そして山地内の河谷をみると、傾動地塊の表面の傾斜にしたがってできた必従谷と、地質構造に適応してできた適従谷とが組みあわさっている。とくに大井川中流の家山と天竜川中流左岸の秋葉山との間では、適従谷と、それにはさまれて生じた屋根の列との発達がよくみられる。