遠州灘の海岸線は、西の渥美半島から東の御前崎まで、きわめてゆるやかな弧を描いて東西方向に長く伸びている単調な砂浜海岸であり、沖合を黒潮暖流が流れている。
まず海底地形を眺めよう。従来遠州灘の海岸は沿岸州をもたない緩斜海岸のように考えられていたが、最近水路部が実施した砂浜海岸の沿岸断面測量によると遠州灘沿岸の海面下には二段の沿岸州がよく発達していることが明らかとなった。この沿岸州の頂部水深・比高・距岸距離を示すとつぎのごとくである。
沿岸州 頂部水深(m) 比高(m) 距岸距離(m)
第一段 〇・三~二・一 〇・一~二・〇 四〇~二〇〇
第二段 三・〇~六・一 〇・六~四・四 三二〇~六二〇
いちじるしい沿岸州は右に示した二段であるが、よく観察すれば数段が存在する。これらの沿岸州は大体海岸線に平行し、連続性は内側の沿岸州よりも外側の沿岸州の方がやや優っている。比高も一般に外側の沿岸州が大きい。海岸に沿う比高の分布をみると、天竜川三角州前面において大きく、そこから東または西に向かって漸減する傾向がある。外側に位する第二段沿岸州はよく連続しているが、内側に位する第一段沿岸州は連続性が悪い。第一段沿岸州をかこむ二メートル等深線はいずれも西方から東方に延びており、第二段沿岸州もそれがもっとも海岸に近づいた部分で、その外側に小さな沿岸州が現われ、これが以東の第二段沿岸州の端緒となっている。