塩分の分布

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 最近、今切口の固定工事が進められ、この口の幅を約二〇〇メートルに固定化した。このため湖外からの流量が多くなり、塩分の分布は昭和三十四年(一九五九)を境にしていちじるしく変化した。昭和三十四年以降外洋水が強く湖内に流れ込み、その変化をみると、底層では一五%の塩素量の分布が昭和三十三年までは、鷲津・村櫛を結ぶ線にあったが、三十四年以降この線が、大崎・舘山寺を結ぶところまで伸びてきている。このことは、いかに湖内に海水が入ってきたかを示すものである。また、これによって水産の上にもいちじるしい影響がおよんできている。海苔についてみると、以前、海苔は鉄道南の漁場のみで生産され、その数もかなりの量にのぼっていたといわれるが、最近この地区の漁場では、黒海苔は漁期の初めにすこしとれるだけで、その後は青海苔に変わってしまう。そして現在良質の海苔がとれる場所は、これまでまったく海苔のとれなかった村櫛や鷲津地先になってきている。その他、従来あまりとれなかったカタクチイワシやサバなどが大量に湖内でとれるようになってきた。
 
(表)第5表 浜名湖における月別平均諸性質
123456789101112年平均
諸性質層別
水温表層11.610.012.814.017.822.926.526.428.821.917.710.718.4
(℃)底層12.011.712.313.517.021.826.226.228.122.118.912.918.6
塩素量表層16.8916.4217.3811.3012.2113.5816.5311.5411.9310.3211.3813.1813.55
(0/00)底層17.2717.7117.7013.1713.5714.8117.5314.2813.2012.1314.0414.9015.02
酸素量表層6.226.815.876.305.704.604.925.034.076.586.886.505.78
(0/00)底層6.036.196.755.464.994.244.183.813.344.595.035.904.95
燐酸塩量表層34.521.822.74.97.53.318.328.256.24.93.12.217.3
(r/L)底層37.621.612.81.428.924.523.971.797.650.95.814.532.6
亜硝酸塩量表層2.63.22.911.17.25.04.25.62.66.05.612.75.7
(r/L)底層2.52.22.48.23.45.33.55.42.110.19.210.55.4
プランクトン量沈澱量20.26.74.28.85.77.129.57.48.548.834.15.015.5
(cc/m3)

 第5表は浜名湖の湖沼学的諸データであるが、この表の中で、塩素量の月別変化をみると、春から夏にかけては塩素量が低い。これは降雨によって湖内の水が低比重化するためである。これと逆に、秋から冬にかけては塩素量が高くなっている。塩素量の地域的分布をみると、湖口ではほとんど外洋水とかわりなく、湖奥に向かうほどしだいに低くなっている。また上げ潮には塩素量が高くなり、下げ潮には低くなっている。