湖水中にどのくらいの酸素が溶けこんでいるかということは、水産の上にきわめて重要なことがらである。そこで湖内における溶存酸素量をみると前表のごとくで、月別の差はあまりいちじるしくないが、表層と底層の差は、月によってはなはだしく異なっている。この差のもっとも多いのは、夏から秋にかけてであって、この季節にプランクトンが多く発生し、斃死し沈澱するからである。とくに湖奥部にこの差がいちじるしい。
湖水の中には、燐酸塩・亜硝酸塩など各種の栄養塩が含まれている。その含有量は、外洋に少なく、湖内に多い。これは湖内に流入する河水に栄養塩が多く含まれているからである。亜硝酸塩は窒素源として、また燐酸塩は燐の供給源として海苔など海藻の生育に必要な栄養塩である。これら栄養塩の月別変化は前表にみるように、春から夏にかけては、それらの含有量が比較的多く、秋から冬にかけては減少する。
このように湖内は栄養塩が豊富にあるため、プランクトンの繁殖もきわめて良好である。プランクトンと魚貝類とは親密な関係をもち、稚魚にプランクトンを餌にして生育している。湖内に稚魚が非常に多く生育しているのは、プランクトンが多く繁殖しているからである。湖内におけるプランクトンの月別変化も前表に示しておいたが、その量は秋にはなはだしく多い。カキが秋にいちじるしい生長をみるのも湖水中のプランクトンが多いためである。
しかし、このプランクトンもいちじるしく繁殖しすぎると、湖水が赤く着色され、いわゆる赤潮といわれる状態が起こり、水産物にかえって被害を与えることとなる。浜名湖では春から秋にかけて、ときどき赤潮が生じ、しかも長期にわたって出現しているような場合には水産生物への被害は大きい。