降水量

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 年降水量の分布は、平地では一般に二千ミリ前後であるが、北部の山地では三千ミリに達する。しかし浜松付近は県内としてはもっとも降水量の少ないところで二千ミリに達しない。県内の降水量分布の大勢は山地の南東側斜面に多く降る傾向がある。静岡県に雨を降らせる低気圧の多くは太平洋側を本県に接近して通過するものであって、それらの低気圧の前方では千メートルぐらいの上層気流が南東風であることが多いからである。このようにして県内の平均降水量は平地においても二千ミリ前後に達するが、これはわが国としては多雨地に属するものである。そして冬の温暖な気候と相俟って、茶・蜜柑の好適な栽培地となっている一条件である。県境を越えて甲府に入れば年降水量は一二〇七ミリに減じてしまい、長野県に入って松本では、わずか一〇六三ミリに過ぎない。西方名古屋で一五四六ミリであって、浜松の一九三三ミリと比べると大変なちがいである。
 降水量の季節的変化をみると第8表のように一月が最小で、六月と九月とが最大である。冬に雨が少なく快晴の日が多いことは前述のとおりであるが、六月の多雨は梅雨期のため、また九月の多雨は秋霖期になっているためで、当地方の二つの大きな雨期を代表している。また各月の降水量の地域的分布の様相は前述した年降水量分布の大勢と同じであって、ただその絶対量がちがうだけである。北に向かって長野県境にいたれば三〇〇〇メートルに達する赤石山脈が聳えており、雨はこれら県の北西部一帯の山間に多量に降り勝ちであるから、天竜川は短期間にいちじるしく増水することがあり、下流の河幅は増大しているが、平時には網目状流路を現わしており、増水すると河幅一ぱいに水が満ち、時おり洪水となる。
 
(表)第8表 浜松の降水量
12345 6 7 8 9 10 11 12 全年
降水量(mm)5677134181180 253 204 202 279 184 111 72 1933