晩霜

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 浜松に暖かい春の訪れは、その本体である南の暖かい湿った空気を運び込むところの、日本海に入って発達する低気圧が原動力となる。しかしこの低気圧通過の後には入れかわりに移動性高気圧が大陸からやってきて日本をおおう、そしてこの高気圧にともなって高緯度地方から乾燥した冷たい空気がやってくることが多い。この高気圧の中心付近では、とくに夜、地面温度が急激に下がり霜を生ずることがある。だが浜松地方は温暖な土地柄だけに年間の霜日数は十八日ぐらいで、全国的にみればはなはだ少ない方である。それにもかかわらず晩霜の害が恐れられるのは、この地方の農作物の中でも大きな比重を占める蜜柑とか茶とかいったような暖地性の作物について、この地方が大体経済的栽培可能の北限に近いため、栽培条件がきびしく、晩霜の害が大きく影響してくるためである。三方原の果樹園などでは防風垣をめぐらし、またコモなどで果樹をおおっている風景をよくみるのであるが、これは寒風とともに冷気を防ぐための工夫である。