こういった晩霜も四月上旬までで、やがて春もたけなわとなり、五月晴れとともに凧揚げがはじまる。五月晴れのころが過ぎると、やがて梅雨の季節となる。前にも述べたように、この梅雨期の雨は九月ごろの秋霖期の雨とともに当地方の二つの大きな雨期を代表している。気温の変化は、春さきから真夏にかけて一本調子で上昇しているのに、湿度の方は六月下旬から七月上旬にかけてもっとも高くなり、この期間は雨の多い陰欝な天気がつづき、日常生活にも一番憂欝な時期である。しかし浜松の梅雨は九州など西南日本の梅雨に比べると、なお軽度である。わが国の南東海上に根をもつ北太平洋高気圧がしだいに日本をおおってしまえば季節はそのまま夏に移るわけであるが、北のオホーツク海がまだ冷たく、ここにオホーツク海高気圧ができて、これが北太平洋高気圧の前進をはばみ、この二つの高気圧の境が梅雨前線となって日本付近に停滞するため、梅雨期になるのであるが、季節が進んで海面の温度が上がるとオホーツク海高気圧もしだいに衰え、ついに北太平洋高気圧に押し切られ、日本はその勢力下に入り、梅雨は明け、本格的な夏の季節となる。