日本列島においても、いくつかの化石人骨が発見されている。もっとも古いと思われるのは、明石市郊外の西八木海岸で発見された腰骨で、ニッポナントロプス=アカシエンシス(明石原人)と名づけられた。この化石は原始的特徴を備えていて、かなり古い年代のものといわれているが、残念ながら出土した地層が不明のため、たしかな年代がわかっていない。ところが昭和三十二年ごろから豊橋市牛川・引佐郡三ケ日町只木・浜北市岩水寺などの石灰岩採石場で、豊富な獣類化石とともに、ぞくぞくと化石人骨が発見され始めた。人骨にはそれぞれ牛川人・三ケ日人・浜北人と命名されている。牛川人は、ヨーロッパのネアンデルタール人類(約五万年前)に共通する特徴が認められるという(鈴木尚『骨』)。