人間は道具を作る動物である、といわれたことがある。サルは訓練すると、道具や機械の使い方を会得することがある。しかしそれを創り出す能力は持ちあわせていないようである。だからもし道具として作られたものが残っていれば、それを頼りに人間の歴史をたどることができる。ましてや、人間の生活した跡がみつかれば、一層たしかなものとなろう。木や竹のような植物質のものは、腐朽しやすいために、今日ではその痕跡さえも見出しがたいけれども、石は土中に埋まったまま、何万年も何十万年も残る。幸いなことに人類の祖先たちは、その当初から手ごろな石を拾ってこれを加工し、道具として用いていた。