先縄文文化

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 洪積層から石器が発見されるということは、昭和二十四年(一九四九)までは一般にはもちろん、考古学者の間でも知られていなかった。日本人の歴史は、縄文時代に始まり、せいぜい五千年の歴史を持つにすぎないと説かれていたのが、その年の九月に行なわれた群馬県岩宿遺跡の調査によって、一挙に万をもって数えねばならないような時代まで溯ることになったのである。こうして縄文文化よりも一層古い文化のあることが知られ、先縄文文化と呼ばれた。やがて各地から先縄文文化の遺跡が報ぜられるにおよんで、その文化の内容がだんだんと明らかにされてきた。そしてひとつの大きな特色として、先縄文文化には土器がともなっていないという点が指摘されたのである。そこで暫定的な先縄文文化という名称は、無土器文化あるいは先土器文化という名称に改められるようになった。