磐田原台地の石器群

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 視野をすこし拡げて磐田原台地をみると、ここにはいくつかの顕著な遺跡が知られている。中でも磐田市池端前遺跡は、昭和三十五年(一九六〇)に発掘調査が行なわれ、総数三二三点の石器や剝片が発見されている(麻生優・小田静夫「静岡県磐田市大藤池端前遺跡」『人類学雑誌』第七十四巻第二号)。石器群の組成は、ナイフ形石器を主とし、彫刻器や掻器を含んでいる。磐田原台地では他に小形のナイフ形石器を含む群と、細石刃核を含む群とが知られている。このように、無土器時代の遺跡が磐田原台地に豊富で、三方原台地に乏しいのは、調査の精粗によるともいえようが、いずれにしても、浜松市やその周辺の台地を舞台として、三、四万年前ごろから人間の活動が始められたことがわかってきた。
 浜松市の北西二〇キロメートルにある三ヶ日町只木で発見された三ヶ原日人や、北北東一五キロメートルの浜北市根堅(ねがた)で発見された浜北人は、その生存年代がさきに約二万年前と推定されていることを述べたが、彼らの使用した道具は、石器の面からみるとナイフ形石器か、細石刃器であったと考えることができるだろう。