土器の発明は、人間が化学変化を応用した最初の事件であった。モルガンは、有名な『古代社会』の中で人類の発達過程を論じたとき、野蛮時代と未開時代を、この土器製作技術の発明または実用ということで区分しているほどである。土器が、いつ、どこで、どのようにして発明されたかという点については、まだ判然としない。通説としては、およそ六五〇〇年前、オリエントと呼ばれる地域(今日のイランとイラクの付近)であったといわれ、ここを核として土器製作技術が世界各地へ波及したと考えられている。これに対して最近では、アジアの東部地域(シベリア・満蒙大陸から日本列島にかけての地域)においても、オリエントとはまったく別の過程を経て、約一万年前に土器が発明されたと考える説がだされている(芹沢長介『石器時代の日本』)。これは縄文文化の起源に関して提出された学説であって、これによるとわが国の土器は、世界最古となるのである。