現在地球上に存在する氷河がすべて融解した場合には、海面は現在よりも五五メートルほど上昇すると推算されている。洪積世の氷河期には、現在の約二倍の量の氷河が、世界各地に拡がっていたといわれているが、その場合には逆に現在より一〇〇メートルも海面低下があったわけである。この海面の上昇と低下という現象を海岸線に移してみると、海が現在よりも内陸に深く進入したり、逆に遠くへ後退したりする現象となって現われる。これを海進と海退と呼ぶ。氷河期は海退期に、間氷期は海進期に対応するわけである。
最後の氷河期を過ぎると、海面はしだいに上昇を始め、いまから約五千年前に現在よりも高い水準に達したことが知られている。その後徐々にまた現在の高さまで低下したのである。この約五千年前の海進期は世界的な現象であったといわれ、わが国でも縄文時代の前期から中期にかけての時期が、海進の絶頂だったと考えられている。