蜆塚人の形質については、つぎのようにいわれている(鈴木尚「蜆塚人骨の総合所見」『蜆塚遺跡』総括篇)。
①頭型は、多く中頭型に属し、まれに長頭型のものがある。現代日本人は短頭に近い中頭型である。
②顔の特徴としては、眉間が強く隆起し鼻は大きく高い。下顎を動かす筋肉は大いに発達していた。
③歯の咬耗度は、年齢のわりに強く、とくに上顎の切歯は水平に強くすりへっている。
④上下の歯の咬みあわさり方は、鉗子状咬合である。現代人の場合は鋏状咬合である。鉗子状咬合というのは、歯がニッパーの刃のように重なることをいう。
⑤手足の筋肉の発達はいちじるしい。
⑥身長は、男性で平均一五六・五センチメートル、女性で一四三・三センチメートルである。縄文人の平均身長は男性で一五八センチメートルである。
これらの特徴は、縄文時代人骨に普遍的に認められるものであって、蜆塚人に固有のものではない。ただ身長が縄文時代人としては低い方に属するというにすぎない。