前節までは蜆塚人の生活内容を項目別にみてきたわけであるが、そこで述べた内容の基本的な面は、とくに蜆塚遺跡に固有のものではなく、広く縄文時代後期を中心とする縄文時代人に共通したものであった。したがって、蜆塚人の生活の具体相は、ほぼ縄文時代後期から晩期初頭にかけての縄文時代人一般の有様を代弁しているともいえるのである。このように蜆塚人の生活が、縄文文化の中で孤立したものではあり得ないとすれば、蜆塚人の生活を取りまく同時代の近隣集落との関係に言及しておく必要がある。これを広く文化的環境という観点から取り上げてみよう。