伊場遺跡出土の土器の特徴

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 伊場遺跡出土の土器群(第20図)を、全体として他の地域の土器と比較すると、愛知県下のものにきわめてよく類似しているが、天竜川以東の地域とくに菊川流域や静岡平野の土器とは大分異なっている。伊場遺跡出土の土器にみられる特徴としてはつぎのような点があげられる。
 
 ①壺形土器と高坏形土器の多くは、櫛描文によって飾られている。
 ②壺形土器の文様要素の中には、わずかながら縄文が認められる(第20図8・9)。
 ③壺形土器の器形は、いちじくの実のように胴部が下膨れになっているのが多い。
 ④壺形土器の中に縦に粘土紐を貼りつけた例がある(第20図7)。
 ⑤高坏形土器の器形は、主として坏部が皿形、脚部が筒形をなしているが、坏部椀状、脚部ラッパ状という例も若干存在する。また脚部下方に三つの丸窓をあけるものが多い。
 ⑥高坏形土器では、坏部皿形、脚部筒形のものに櫛描文が盛行している(第20図14・15・18・19)。
 ⑦甕形土器には台がつけられ、そのつけ根の部分を粘土紐で補強したものが目立つ。
 ⑧全般的に色調は明るく、赤褐色・黄褐色を呈しており、中には丹塗りのものもある。

第20図 伊場遺跡出土の弥生式土器(1~21,Ⅰ式 22~29,Ⅱ式)(外山和夫氏実測)