国造の系譜

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 けれども、古事記にせよ、国造本紀にせよ、これらの国造の設置時期や出自(すいじ)については、これを後から付会された伝承として警戒することが肝要である。現在、諸文献にみえている国造の例は、国造本紀をも含めて百五十ほどあるが、そのほとんどが皇室や有力大氏族につらなる系譜を持っている。これは決して事実そのままを伝えたものではなく、本来、各地の在地勢力であった小国首長らが、大和朝廷に服属の後、中央勢力による統制がゆきわたるにつれて、自家の系譜を中央勢力に結びつけようとした結果であろう。遠江国造にしても、古事記では天孫系とし、国造本紀では物部氏系としているが、これは伝承の相違であって、どちらを真とも断定はできない。遠江の地の諸国造について文献に残されたものは、このように乏しいのであって、具体的な状況は不明というほかはない。