国民は身分上、良(りょう)と賤(せん)とに大別された。賤とは奴婢(ぬひ)などと称せられる、いわば奴隷であるが、その数は少なく、せいぜい人口の一割以下であったろうといわれ、国民のほとんどは良民であったとみてよい。
この良民は、さらに有位者と無位者とに分けることができよう。有位者は朝廷から位階を授けられている役人たちであって、位階は正一位から少初位(そい)下までの三十階があるが、これはいわば朝廷が各個人に対して公認し、格づけした尊卑の区別であって、有位者はその位階の高下に応じて身分上・経済上の種々の特典にあずかり、位階相応の官職にもありつくのである。中でも五位以上はとくに大きな優遇を受け、この点からすれば、当時の五位以上を貴族と呼ぶことが穏当であろうと思われる。そして、五位といえば、大体遠江守ぐらいの地位がこれにあたる官職とみてよい。