遠江は東海道に属するから中路で、中路には各駅に馬十疋を置く規定であった。この駅馬は重大緊急の官用通信や、重要な官使の往来に際してだけ用いられる原則で、これを使用するには官から駅鈴(えきれい)を受け、これを証として駅馬を徴発するのである。
また、駅馬とは別に郡ごとに伝馬五疋ずつが置かれたが、これも国司の赴任、官使の往来、罪人の護送などの官用に使われるもので、この方は伝符(でんぷ)を証として徴用する。
したがって、この駅制はあくまでも純官用のもので、役人の私用や、庶民の往来には関係がうすいが、しかしこの駅路が一般交通路の基準幹線となるのは当然であるから、その整備は大きな意味を持っているのである。