遠江国司

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 この、前後四百年に近い平安時代を経過するあいだに、地方行政は崩壊の一路をたどった。その姿を象徴的に示すものが、いわゆる国司制度の崩壊である。それではつぎに、主にそのあいだの遠江国司の変遷によって、その過程を説明しよう。
 中央集権体制である律令体制にあって、中央政府がいかに強大な権威を誇っても、それを支えるものは、結局円滑な地方行政によって集積される諸国の力である。この点からいって、強大な職権を与えられて諸国に下り、行政の任にあたる国司の責任は重大であるが、その国司の任命や、国司個々の責任感において、事態はしだいに悪化する傾向にあった。