『倭名類聚抄』(略して倭名抄)は、平安中期の学者の源順(九一一-九八三)があらわした漢和辞書で、多数の語を天地・人倫などの部門に分けて収め、説明や和訓が記してあって、百科辞典のような性質も持っている。【二十巻本】これには十巻本と二十巻本があるが、ふつう、順ははじめに十巻本を作り、後年これを増補して二十巻本にしたのだと考えられている。この書物は国語学上はもちろんのこと、古文化一般について無視することのできない重要なものであるが、特に二十巻本には国郡部という部があって、全国の郡郷名が列挙してあり、これが古代の地名を考える上に無二の史料となっているのである。
いま、この『延喜兵部式』と『倭名抄』とを考え合わせて古駅の地を考える前に、一応、『倭名抄国郡部』に挙げられた遠江諸郡郷の名と、『静岡県史』に掲げてある推定現在地とを、浜松市域およびその付近の部分に限って表示してみよう。
倭名類聚抄 高山寺本 遠江国郷名の記事