高山寺本

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 ただし、この場合にもう一つの問題がある。それは、これらの郡郷名が二十巻本に収められていることは前述のとおりであるが、じつはこの二十巻本も、世間一般に流布している木版本のほかに、高山寺(こうざんじ)本という、平安時代末の古写本があって、流布本と高山寺本とでは多少の相違点があるのである。しかも、この両者は、郡郷名についても一長一短で、高山寺本が古写本であるからすべてこれに従えばよいというような簡単なことではかたづかない。そこで、つぎの表には、流布本と高山寺本とを共に掲げることにする。
 
(表)倭名抄郷名表
郡名郷名推定現在地(静岡県史による)
流布本高山寺本
浜名郡坂上(サカカミ)   引佐郡三ケ日町本坂辺
坂本(サカモト) 坂本     〃   日比沢辺
大神(オホミワ) 大神 浜名郡新居町中之郷辺
駅家  駅家     〃   浜名辺
贄代(ニヘシロ) 贄代 引佐郡三ケ日町鵺代辺
英多(アカタ エタ) 英多   〃   三ケ日辺
宇智(ウチ) 宇智   〃   宇志辺
敷智郡蛭田比留多(ヒルタ)蛭田比留太  
赤坂阿加佐加(アカサカ)赤坂安加左賀 浜松市伊佐地町辺か
象島  象嶋 浜名郡舞阪町辺
柴江之波江(シハエ)柴江之波江 浜名湖東岸か
小文  小文  浜松市古人見町辺か
竹田太介多(タケタ)竹田   
雄踏  雄蹋 浜名郡雄踏町宇布見辺
尾間於万(オマ)海間阿万 浜松市馬郡町辺か
和治  和治  〃 和地町和地辺
浜松波万々都(ハママツ)浜津   〃 伊場辺
駅家      〃 野口町・八幡町辺か
引佐郡京田美也古多(ミヤコタ)京田美夜古太浜松市都田町辺
刑部於佐加倍(オサカヘ)刑部 引佐郡細江町中川辺
渭伊井以(ヰイ)渭伊為以 〃 引佐町井伊谷辺
伊福以布久(イフク)伊福以布久  〃 細江町気賀辺か
麁玉郡三宅美也介(ミヤケ)三宅  浜北市宮口辺か
碧田安乎多(アヲタ)碧田安乎多 天竜市青谷辺か
覇多反多(ハタ)覇田反多浜松市半田町辺
赤狭阿加佐(アカサ)赤狭安加左浜北市於呂辺
長上郡茅原加改良(カハラ)茅原知波良 浜北市永島辺か
碧海安乎宇美(アヲウミ)碧海阿乎宇三浜松市中里町大見辺
長田奈加多(ナカタ)長田  〃 中田町辺
河邊加波乃倍(カハノヘ)河邊加波へ  
蟾沼此木奴万(ヒキヌマ)蟾沼此支奴末  
壱志以知之(イチシ)壱志以知之 浜松市中野町一色辺か
長下郡大田 (オホタ)大田  磐田郡於保村下大之郷辺か
長野奈加乃(ナカノ)長野奈加乃磐田市前野辺
貫名奴木奈(ヌキナ)貫名沼岐奈  
伊筑 (イツキ)伊筑   
幡多判多(ハンダ)幡多判多 浜松市富屋町(富屋敷)辺か
大楊於保也奈木(オホヤナキ)大楊  〃 大柳町辺
老馬於以万(オイマ)老馬於以万 〃 老間町辺
通熊止保利久万(トホリクマ)通隈止保利久万  〃 立野町辺か