駅をあげてあるのは『延喜兵部式』であるが、民政にとくに関係が深いのは、民部・主計・主税などの諸式であろう。民部式によれば、遠江は上国で十三郡を管し、調庸は毎年十一月に納入する。調庸の品目は主計式に定められているが、調としては各種の綾や絹布を、庸としては主として絹糸を納めることになっており、他国に比べて絹布・絹糸により多く重点が置かれている傾向もうかがわれるが、これはこの地方の産業の特徴を示すものかもしれない。ただし遠江国は、延暦四年(七八五)五月、勅を以て調庸の粗悪を厳責せられたこともある。中男作物としては、木綿・胡麻油・乾魚などを貢納した。