ところで、これらをまかなう遠江国の財政規模については、主税式に規定があり、正税・公廨(くげ)各二八万束、雑稲(ざっとう)二一万束という大量である。これらは皆国内で出挙して三割の利を収め、正税の利で行政費を支出し、公廨の利で官物を補充し、残余を俸給に充て、雑稲の利はそれぞれ定めてある特殊な用途に充てるものである。これらの稲は総計七七万束という巨額で、その利稲も三割とすれば二三万束になる計算であるが、ここで注意すべきことは、これらの『延喜式』にみえている規定は、律令体制の理想的な姿、せいぜい本来はこういう形になるはずという姿を画いたものであって、決してこれを平安中期の現実と考えてはならないという点である。