【枡】中世では、ある枡で計量した米を、ある必要からさらにいま一度他の枡ではかりかえることが、しばしば行なわれた。このときに枡目の変化は、減少と増加のいずれかの形であらわれる。はじめの枡よりはかりかえの枡が大きい時には枡目が減少し、その逆のときには増加する。中世では一般に枡目の減少することを「縮(ちぢ)む」といい、減少分を「縮(ちぢみ)」と表現し(この実例はごく少ない)、また増加することを「延(の)びる」、増加分を「延(のび)」という慣例があった。平均して二倍ほどの延びがある。手数をかけてわざわざ容積の小さい他の枡ではかり直しするのはなぜだろう。そのおもな理由は、計量者(荘園領主)が、その差額を取得するためである。荘園領主が収入の増加をはかったわけである。たとえば、年貢を収納した年貢枡一斗を収納枡ではかると、七升の「交分(きょうぶん)」つまり増分がつく。このように中世では年貢に対し「交分」を一種の付加税とみなすのが普通である。この状態が発展して年貢銭にも「交分」がつくようになった(「蒲御厨収納帳」『東大寺文書』四ノ二九のうち。宝月圭吾『中世量制史の研究』)。田に対し畑からは麦・アワ・大豆などの雑穀を納める。
【公事】このほか公事(くじ)がある。農業の副産物の藁(わら)・糠(ぬか)をはじめ漆(うるし)・麻(あさ)・柿(かき)などの山野の産物、農民の手でつくられた織物類・炭・薪・海産物まで、時期と場所によって多種類である。
【夫役】また夫役(ぶやく)がある。荘園領主の直営地の佃(つくだ)を耕作する夫役とか、道路・用水施設などの工事人夫、掃除などの雑役までも夫役のうちである。