「東の方さまへゆくほとに、遠江国天竜のわたりにまかりつきて、舟にのりたれは、所なし、おりよと鞭をもちてうつほとに、かしらわれて、ち(血)なかれてなん」
とあり、満員の渡船から西行は鞭で打たれたうえ、降ろされたという。
約百年のち、阿仏尼が建治三年(一二七七)の『十六夜日記』に、
「廿三日、天りうのわたりといふ、舟にのるに、西行がむかしもおもひいでられて、いと心ぼそし、くみあはせたる舟たゝ一にて、おほくの人の ゆきゝにさしかへるひまもなし、 水の淡の浮世にわたる程をみよ早瀬の小舟棹もやすめす」
とあって、西行が池田渡船場での事件は伝説だが描写されている。
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中世交通要図