阿仏尼は若いころ、深く契った男にすてられ尼になる。まもなく重病になって恢復したときに、養父の平度繁が遠江から上京してすすめたので、十月二十日すぎ、引馬のあたりにあったらしい養父の家に下った。そして十一月に帰京する。この紀行文が『うたゝねの記』の後半であり、『十六夜日記』によると、引馬に泊り、平度繁の子や孫に面会している。【浜松】阿仏尼は、
「浜松のかはらぬかげを尋ねきて
みし人なみに昔をぞとふ」
と詠じた(浜名の浦などの風景の描写もかなり詳しい)。
引馬と阿仏尼