新しい仏教

439 ~ 440 / 706ページ
 平安末の人びとは、戦乱・天災などに絶望し、救いを宗教にもとめていた。しかし一般の僧たちは、宗教としての救済活動につくさないものが多かった。聖(ひじり)とよばれたまじめな僧は、寺院をはなれ、ひそかに隠遁の生活を送ろうとした。この聖たちの信仰と生活から新しい救済の宗教はおこる。いままでの仏教は、絶対のものにたよろうとし、信仰は形ばかりであった。しかし鎌倉時代は、新しい時代である。そこに支持される新しい仏教は、武士や民衆を意識していなければならなかった。
 平安末に、法然源空がでて浄土宗を京都に開き、鎌倉初期には明庵栄西(みょうあんえいさい)がでて臨済禅を鎌倉に招来し、上流武家の信仰をうけた。鎌倉中期に入ると、親鸞がでて常陸(茨城県)に浄土真宗を分派し、道元がでて曹洞禅を越前(福井県)に伝え、日蓮は密教や神国思想をとりいれて法華宗を安房(千葉県)におこし、一遍は空也の踊り念仏を再興させながら民衆と接触し、神社信仰とも妥協した時宗を熊野(和歌山県)にはじめた。