永仁(えいにん)五年(一二九七)幕府は、朝廷が中国の徳治思想で、神社領の売買などを無効にした徳政にならい、徳政令(とくせいれい)を発布した。その第一条で、訴訟手続きや裁決についての異議申したてを禁止した。第二条では御家人の所領の売買・質入れは禁止、売却地はもとの持主に無償で返させる(多少の例外はある)。この命令に反対し、乱暴を働くものは処罰する。
つぎに、非御家人や商人たちが手に入れた土地については、すべてもとの所有主の御家人に返す。これが徳政令の眼目である。
第三条では、債務返済の訴えは受理しない。ただし質物を土倉(どそう)に入れたときは、この限りではないとしている。この但し書きで、徳政令のために、すべての金融が業者から拒否されるのを予防しようとした。